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京都市京セラ美術館カフェ[ENFUSE]企画『日本画×和菓子』3

京都市京セラ美術館カフェENFUSE
日本画和菓子企画コレクション展秋
〇西山翠嶂 『広寒宮 』 〇
 2020年度秋の展示作品の中から題材として 西山翠嶂『広寒宮』を 選ばせていただきました。

〇 広寒宮 〇
 広寒宮とは、中国の古事で「月にあるとされる都」のことです。
 中国の伝説では、宮殿があり、そこには不老不死の薬を飲んだあと月へと逃げかくれた嫦娥(じょうが)が住んでいるとされます。
 作品では天女達が楽器を演奏し舞を舞っている優雅な姿が描かれております。

〇 天女花 〇
 今回、こちらの作品をモチーフにした和菓子ということで、「天女花」の形を模した和菓子を制作させていただきました。
 作品には描かれていないのですが、同じく中国で「天女花」と呼ばれる優雅な姿の植物がございまして、日本では「オオヤマレンゲ」と呼ばれております。
 オオヤマレンゲは大きい山にある蓮花のような花という意味で、山に咲く優雅な花です。地上では横〜下に向かって咲きます。

〇 月の重力に漂う羽衣 〇
 さて、月の重力は地球の六分の一。今でこそ当たり前の事実ですが、天女を想像した昔の人々は「なぜか羽衣が浮いている」ように表現しています。
 元となった中国の神話は『淮南子』という書物に書かれているそうですが、前漢の武帝の頃に書かれたということは紀元前です。
 西山翠嶂さんがこの作品を発表したのは1907年、月の重力は万有引力の法則から導き出されたそうなので、(ニュートンは1665年前後にこの法則を発見したと言われております。)六分の一の重力を意識して描かれた可能性はございます。しかし、私たちが目にしたことのある映像「月面をゆっくりと歩く宇宙飛行士」はまだまだ夢の話だった頃です。

〇 六分の一の重力で咲く花 〇
 天女の羽衣と同じく月面で咲く花を想像し「天女花」の和菓子を制作いたしました。地上では下に向かって咲きますが、水面の浮力で浮く蓮花のように上に向かって(地球に向かって)咲くのではないか?という空想から、このようなお菓子が出来上がりました。

〇 中の餡子にも秘密が 〇
 中の餡子にも秘密があります。サンザシというバラ科の植物の実で山査子という中国原産のフルーツを使用しています。
 日本にも江戸時代に薬用といて輸入されました。2000年前に書かれたとされる「神農本草経」(中国最古の薬物書)にも登場し、多量に長期に服用しても副作用がなく、不老長寿の効果がある「上薬」に分類されています。
 酸味のあるベリーのような味なのですが、やはりどこか中国を思わせるような異国情緒あふれた風味を醸し出してくれます。また、ドライフルーツにしたものを餡子に練り込んでおりますが、中国ではそのまま食べるほかに酢豚のような料理に入れたりもするそうです。

〇 現実味を帯びた「広寒宮」〇
 さて、不老不死の薬を飲んだ嫦娥(じょうが)が逃げ込んだ月の都ですが、なんと現在中国の宇宙探査機の名前が「嫦娥」。その3号機が2013年に月面に降り立ち、中国はその地を「広寒宮」と名付けました。
 もしかしたら何十年後、本当に月に都ができる日が来るのかもしれません。

〇 お召し上がりは 〇
2020年9月26日(土)〜 11月29日(日)の「コレクションルーム秋期」の展示期間中、美術館内カフェ「ENFUSE」さんにてお召し上がりいただけます。ただし、数量は限定となっておりますので、品切れの際はご了承いただけますようお願い申し上げます。
 西山翠嶂 が描いた作品をご覧いただきました後に、その余韻を楽しみながら和菓子をお召し上がり頂けましたら幸いでございます。

企画 ENFUSE

製作協力 京都市京セラ美術館コレクションルーム

和菓子製造 京菓子司 金谷正廣